三菱UFJの資本増強

昨日の日経夕刊に「三菱UFJ、4000―5000億円資本増強へ」という記事が掲載されていた。
記事の内容は、大まかに言うとこんな感じ。
三菱UFJフィナンシャル・グループMUFG)は26日、2006年3月期で自己資本を4〜5千億円増強する方針を固めた。
経営統合で将来の収益見込みが強まったと判断、旧UFJグループが経営危機に際し大幅に減額した「繰延税金資産」を復活して計上する。
繰延税金資産を大幅に削減した分は、処理方針が定まらない「評価性引当金」として、今年1月発足した三菱東京UFJ銀行に引き継いでいた。
MUFGは業績が急回復しており、将来の課税所得もある程度順調に増えると予想されることから、旧UFJ分の引当金を4千億円超取り崩し、繰延税金資産として「復活」させることにした。その分、自己資本も膨らむ。
MUFGは、今回の繰延税金資産計上に伴って決算が大幅に上ぶれするのは望ましくないと判断。利益には計上しないように会計処理する方向。
MUFGはこうした会計処理について監査法人から適正との見解を得ており、週内にも発表する。
正直に言って、この記事の内容は全然意味が分からなかった。
そもそも取り崩した繰延税金資産は、貸倒引当金の有税引当に伴って生じたものだろう。処理方針が定まらない「評価性引当金」って何だよ? って感じだ。
繰延税金資産を再計上するのであれば、確かに法人税等調整額を経由して会計上の利益が増加するので、確かに自己資本は増加する。しかし、「利益には計上しない」で自己資本を増加させるなんて無理だろう、その他有価証券じゃあるまいし。
などと、つらつら考えさせられた記事なのだが、今日の朝刊に解説記事らしいものが掲載されていた。これによれば、上記評価性引当金は簿外で引き継いでおり、これを復活させるとある。
この記事もまた意味不明だ。簿外の引当金って何だよ? B/Sに計上するから引当金だろうっつーの。
どうも、考えるにこういうことではないか。
・今年1月の経営統合時には、有税償却分の繰延税金資産は計上しない方針だったが、利益が出ているため、繰延税金資産を計上できる余力がでてきた。繰延税金資産を計上すれば、その分だけエクイティファイナンスなしで自己資本を充実させることができる。
・しかし、通常の税効果会計を適用すると、繰延税金資産を復活させた分だけ利益が増加してしまう。それは、銀行の儲け過ぎ批判につながるので何とかして避けたい。そこで、経営統合時に遡って、企業結合会計の一環として繰延税金資産を復活させれば、その分は合併差益としてP/Lを経由せずに資本計上できる。
最終的には、決算短信なり、有価証券報告書なりで確認しないと分からない話だが、この推測通りだと日経の記事はかなり正確性を欠くことになる。色々とニュースの内容について考えることも、結構簿記論や財務諸表論の勉強になるものだ。