竜王戦終了

もう一昨日の話になってしまったが、竜王戦第7局は先手を引いた渡辺竜王が勝ち、藤井元竜王以来の竜王3連覇を達成した。佐藤棋聖を応援していた私としては不本意な部分もあるが、結果は結果。若き竜王の勝利は祝福したい。
それにしても、今回の竜王戦は渡辺竜王の隙のない指し回しが印象に残った。内容的には、第3、5局はいずれも佐藤棋聖の勝ちでおかしくない内容だったが、時間をうまく余して、終盤に羽生3冠ばりの巧妙な手渡しを見せ、時間に追われた佐藤棋聖にやや疑問手が出るという展開だった。この辺り、棋聖の対局過多の影響もあるのかも知れないが、ちょっと不満の残るところだ。
しかし、振り返って渡辺竜王は、負けたとはいえ第2局で大きく成長したのではないだろうか。竜王自身、ブログで「ミスもありましたがこれだけ終盤に変化が多い将棋は経験がなく棋士人生最高の熱戦と言っても過言ではない一局でした」と振り返っており、この1局が彼を本物に脱皮させたような気がする。それ程、これ以前と以後では指し回しが違っているように感じた。
また、どうも第6局終了時には関係者に佐藤棋聖の△3二金を批判していたようだが、これまた自身のブログで、
「2手目△3二金の連投には驚きましたが4手目△4一玉を見て佐藤棋聖が△3二金にこだわった理由が分かりました。この手がいい手でした。しかし4手目にして早くも新手とは将棋にはまだまだ可能性があるんですね」
と振り返られている通り、棋聖の探求心に何らかの感銘を受けたことを窺わせた。正直、これまで渡辺竜王はあまり好きではなかったが、この素直な感想に彼に対する好感を抱いた。
何れにしても、棋聖の2冠はならず。まだ、丸山九段との王将戦プレーオフ、深浦八段との棋王戦挑戦者決定戦が残されており、2冠以上の可能性はあるが、非常に残念だった(しかし、ほとんどのタイトル挑戦に絡む佐藤棋聖って一体…)。しかし、30代後半になっても進化している佐藤棋聖は、近い将来必ず今以上の最強の姿を見せてくれると信じている。今はそれに向けた助走期間ではないだろうか(助走期間でこれだけ強かったらそれで十分という気もするが…)。