ライブドア問題のその後

 先日のダイアリにライブドアによるニッポン放送株取得の件を書いたが、その後の展開は傍観者としては面白い限り。
 先ずは、フジテレビ側が対抗策としてTOBの目標を50%超から25%超に引き下げて、ニッポン放送によるフジテレビ向け議決権の失効を狙えば、それを受けたほりえもんは夜のニュース番組で「意味が分からない。50%超を取得して子会社化し、増資すれば大丈夫」とますます当事者の神経を逆なでするような発言に終始する始末。政治家・経済界ともお決まりの異端排除に向けた一斉ライブドアバッシングと、この辺はまあ予想の範囲内。
 しかし、ここで意外なプレーヤーが存在感を示す。その名はリーマン。ライブドアのCBを引き受けているのだが、お人好しなことに、ライブドアほりえもん保有の同社株をリーマンに貸し付ける契約まで交わしており、これを市場で売却することでライブドア株が急落した。このCBの発行条件についての詳細は不明だが、株価下落に連れて転換価格が下がる仕組から推察すると、瀕死の企業の定番商品であるMSCBと類似のスキームではないかと推測する。その後の報道には、転換価格の下落により、実質的に外資の支配権がフジテレビに間接的に及ぶ可能性が頻繁に指摘されるようになる。この辺り、かなり政治的な匂いも感じないではないが…
 正直、ライブドアのような会社がどうなろうと個人的には何の興味もないが、今回のマネーゲーム(敢えてそう呼ばせてもらう、企業買収としてはお粗末過ぎるので)を通じて、ほりえもんには二つの疑問がある。
 一つは、「法律に反していない」を連発すること。確かに法律には明記されない不明瞭なグレーゾーンがどうしても付きまとうのは仕方のないところだが、それは「法律で禁止されていなければ何をしても良い」という意味ではない。現に、彼自身、立会外という手法が批判されるとその後は市場時間内で買い付けており、言動不一致極まりない。倫理観には縛られないと主張するなら、終始一貫してもらいたい。だから虚勢を張っているだけだと思われるのだ。
 二つ目は、これだけ会社を揺るがすような社債発行&企業買収を、株主に大した説明もせずに行っていること。確かに、公開企業と言っても依然ほりえもん筆頭株主ではある。しかし、一歩間違えば会社が傾くような巨額のCB発行(しかも転換価格がどんどん下落する)を、大した使途の説明もなく発行できるようでは、投資家保護など絵空事である。「ネットと放送の融合」というビジョンだけでは説明にはならない。公開企業としての責任をどう考えているのだろうか、ほりえもんは。
 但し、これらの疑問はオーナー系の公開企業には多少ならずとも付きまとうケースが多いことは否定できない。この事件を契機にTOB制度の見直しだけでなく、公開企業のあり方にまで議論が発展することを期待して止まない。